人の進化と咬合について
われわれの先祖がだんだん食べ物を加工することを覚え、それで軟らかいものを食べるようになり、咀嚼にあまり力がいらなくなってきました。
このことが脳にどんな影響を与えたのか、相変わらず硬いものを食べているゴリラと比べてみましょう。
ゴリラ(オスの成獣)の側頭筋は、頭のてっぺんの峰のような矢状稜(しじょうりょう)からスタートして下顎の筋突起にまで伸び、強大な咀嚼力を保っています。だからゴリラの場合は、本来なら「頭頂筋」とでも呼ぶべきかもしれません。
ヒトの場合は、強大な咀嚼力が不要になったので、筋のスタート部は頭のてっぺんから、しだいに下方に退縮を始め、いまや「こめかみ」の少し上の側頭窩(そくとうか)に付着しています。
頭の頂上部分を指で前後左右に押すと、多少なりとも頭皮がずれるのは、この移動し退化した側頭筋の腱の部分の名残りです。
いわば、頭全体をおおっていた分厚い帽子を脱いだようなものですから、脳はどんどん大きく成長する機会を与えられたことになります。むろん、この変化には長い長い年月が必要で、今から60万年前の北京原人の頭蓋化石にすら、ゴリラのような矢状稜の痕跡はありません。
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